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入船亭遊京大全2

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(メモ)コアラから学んだこと

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     動物園のえさやり。これは大変なショー。

    退屈そうにしている動物たちもいきいきと動く姿をみせてくれるからだ。


     

     ちょうどコアラ舎で餌の時間だというのでレンガを積んだ神殿のような建物へ入る。



     コアラ舎の中の様子。

     自然味はなく、実験室のような雰囲気。



     中心にそびえ立つ、人工のユーカリの木。これがかえってここを死の世界のようにしている。



     丸太が数本束ねられていて、ところどころにユーカリの葉が差してある。コアラは丸太を束ねた節目に座っている。 



     コアラは二匹いる。


     コアラA。

     全く動く気配がない。丸まってこちらを背にしてずっと寝ている。

     



     奥がコアラA。手前がコアラB。


     コアラBは起きていて窓の向こうの観客をみたりする。見物客は当然こちらと写真を撮る。別にかわいいと言う感じの表情には見えない。


     「お前にこの気持ちが分かるか。」


     私には、そういった恨みを含んだ表情に見えた。



     えさやりの時間と思い込んでいたが、よくみると「えさの交換の時間」という細かい表現。


     確かにすでに大量のユーカリがある。しかし二匹はそれぞれ全く食べる様子はない。


     解説によるとコアラは好みが激しく、10種類近くのユーカリの葉を出しても、気に入らなければ食べないというのだ。


     『エサの交換の時間』


     これはショーとして成立しないことへの保険というわけか。



     応用できそうだ。


     

     「落語」でなく、


     「口伝による伝統的古典の暗誦」



     と宣伝すれば、すべった場合にクレームも出ず、むしろありがたがってくれそうな気がする。


     入場料も3千円くらい上げられそうな気がする。




     ガシャンという音がした。



     奥のゲートが空き、飼育員さんが入ってきた。女性の飼育員さんはつんつんした感じのきれい系の顔立ち。その愛想のなさは、今までどれほど多くのユーカリを交換し、またどれほど多くのユーカリをこのコアラたちが口にしなかったのかを想像させる。 



     コアラたちが一斉に飼育員さんの方を向いた。



     コアラBは首を回し振り向き、コアラAは起きてそちらを見た。



     まるで石像のようだったコアラAが起きたことにとても驚いた。


     見物客はやはりコアラAに注目。驚きの声を上げた。



     飼育員さんは数種類のユーカリをそれぞれのコアラのスペースで、3つに分ける。


     急須から3つの湯呑に注ぐように均等に分けて、それを丸太の節目節目それぞれのスペース3ヶ所にある塩化ビニルのパイプへとさしていく。



     コアラA、Bともに、今いる場所のすぐ下のパイプで交換されるのをじっと待ち、交換されるやいなや、ユーカリの葉の匂いを嗅ぎ、口に含む。別に派手さはない。




     山が動いた。




     コアラAはなんと丸太を器用に渡り、その先の節目へ。そちらのユーカリを食べ始めた。



     お客様は皆、コアラAに注目。誰一人としてその場に留まるコアラBを見ていない。



    (丸太を渡り終え、奥で視線を独り占めするコアラA)


     

     私はコアラAは大変なエンターテイナーだと感じた。



     「静」があるからの「動」。



     いかに期待をさせず、いかに大きく裏切るか。



     ただ食べるという行為の中でどう山を作って見せるか。



     驚きをいかに連続させ、畳み掛け、ただ足す以上の効果に変えるか。



     コアラBという、全く正反対の存在がAのショーをより引き立たせたとも言える。



     BがあるからこそのA。


     しかし人の注目を集めるのはA。



    (さらに丸太を渡りとどめを刺すコアラA)



     (ユーカリの中へ埋もれていくコアラB)


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